メインダイニング海 外観 アイキャッチ

【国登録文化財】富士屋ホテル食堂
天井画保存修理工事

建造物装飾

所在地: 神奈川県
指定:国登録文化財
製作期間:2018年~2020年

日本クラシックホテルのパイオニアとして知られる富士屋ホテル(神奈川県足柄下郡箱根町)。

その140年余に及ぶ長い歴史の中で、和洋様々な建造物群が整備されてきましたが、平成30年から全館耐震補強・改修工事が開始され、令和2年7月15日にグランドオープンを迎えられました。

昭和5年(1930)に建てられた富士屋ホテル食堂棟は、1階鉄筋コンクリート造・2階木造の和風意匠建築で、国の登録有形文化財(建造物)に登録されています。

このたび川面美術研究所は、そのメインダイニングルーム「ザ・フジヤ」の天井画を修理致しました。

 

メインダイニングルームは富士屋ホテルを象徴するレストランとして広大で、修理対象は格天井画159枚(約164㎡)、折上天井画376区画292枚(約55㎡)、天井板絵1枚(約2㎡)を数えました。

修理の過程で、これらの天井画は渡部浩年・本多蕉風・大沼南圃・梅荘という4人の日本画家が分担して制作していることが判明しました。

格天井画は636種の植物、折上天井画は308羽の鳥と239匹の蝶が、それぞれ付立(つけたて)を用いた伝統的な写生に、近代的な感覚を加味した表現で、生き生きと描き分けられています。

さらに格天井画と折上天井画には当時高価な建材であった合板を大量に導入し、天井板絵には4m強の無垢の一枚板を使用するなど、内部装飾には目を見張るものがあります。

 

今回の修理によって、天井画は全面的に汚れが取り除かれたので、メインダイニングルームはより明るい空間としてよみがえりました。

合板の変形や剥離等も、文化財的な価値を尊重し、専用の治具を作って修理、復旧しました。

格天井画159枚中6枚は、損傷が著しいことから古色復元模写画を作製して嵌め替えましたが、お気づきになるでしょうか?